会社を知る教育の場「相互理解の会」発足
会社の未来を担う若手・中堅社員が自らの手で立ち上げた「相互理解の会」。
社員一人ひとりが他部門の業務内容や思考を知る機会を設け、多角的な視点を持つことで会社全体が一体となって成長してくことを目指している。部門間の壁をなくし、会社全体を最適化するための土台作りを目的としたこのプロジェクトは、どのように企画され、どう発展していったのか。
大学院では環境情報学を専攻し、新卒で入社後は営業職として客先である空調機メーカーを長年担当する。いくつかの社内プロジェクトのチームにも参加しており、相互理解の会ではプロジェクトリーダーとして、会の運営からスケジュール調整、説明資料チェック、開催時のファシリティーションなどの運営に関わる業務に取り組んだ。
大学では光・画像工学を専攻し、新卒入社後は技術管理グループで4年勤務後、品質管理グループへ異動となる。技術管理グループ所属時には製品開発テーマや特注製品の設計に従事した。品質管理グループではファブレスメーカーとして生産を委託している組立協力先の管理や組立先と協働で品質向上に取り組んでいる。今回、相互理解の会ではサブリーダーとして企画の運営、スケジュール調整、資料チェックに関する業務に取り組んだ。
これまで会社を支えてきたベテラン層から世代交代を進めるために若手・中堅社員の採用に力を入れた結果、現在の社内の年齢構成は40 代以下の社員が全体の 50%を超える状況になりました。若手・中堅社員が増えたことで、チャレンジ精神に富んだ活気ある社風が醸成されましたが、一方で新たな課題が生じました。
将来の会社経営を担う人材を育成するには、自部門だけでなく会社全体を俯瞰できる人材を育てる必要があります。しかし、現在進めている世代交代の過程で、各部門の主力である若手・中堅社員の積極的な人事異動やジョブローテーションが難しいというジレンマに直面。そのため、部門間の連携不足や業務停滞、さらにはセクショナリズムの増長といった問題が生じ、今後の会社の成長に影響を及ぼす可能性があります。
製品開発や業務改善のための部門横断的なプロジェクトもありますが、担当者や業務範囲が限定的であったため、他部門への理解を深めるには不十分でした。
そこで、こうした課題を解決するために、会社が成長する次の一手を考える会議体「NextOne」チームで、各部門が連携して互いの業務や思考を理解する機会を創出し、会社全体が一体となって前進するための方法を模索。その結果、「会社への理解を深める教育の場」として、「相互理解の会」を発足・実行することが提案されました。
まず、この取り組みを全社展開する前に、部門間の距離が近い部門同士で互いの業務内容を説明する機会を設けました。ここでは単に業務説明を行うだけでなく、日頃のやり取りで生じている課題を互いに擦り合わせる場としました。
この取り組みが有意義であると評価され、全社での開催が決定。全9回にわたる各部門の説明会を実施しました。最終回には経営戦略にあたる部門がプレゼンテーションを行い、会社の方向性や今後の道筋を共有できたことは、非常に実りのある時間となりました。
説明会で使用するプレゼン資料は、新入社員から中堅社員まで誰もが理解できるよう、専門用語を避け、簡潔かつ分かりやすい内容にすることを重視しました。各部門の担当者が円滑に資料を作成できるよう、運営側で助言を行い、資料のブラッシュアップに十分な時間をかけました。
また、説明会をただの業務説明で終わらせず、参加者の行動意識に対し変化を促すことが大きな課題でした。そのため、活発な質問や意見交換が生まれるよう、内容の質を高め、参加意義を感じられる場にすることを目指しました。他部門に自部門の課題や困りごとを伝えることで関連部門にも課題を共有し、新たな気づきを与える機会になると考えたためです。この狙いから、各部門のプレゼンテーションに「グループでの取り組み」 という項目を設けました。
全社展開する前に実施した部門間説明会の後、両グループにとってメリットのある共通課題を見つけるため、事務局と各グループの代表者で話し合いの場を設けました。
業務上の関連性が高いグループ同士では課題を見つけやすかった一方で、関連性が低いグループ同士では課題の抽出に苦労しました。しかし、業務上の繋がりが薄いグループであっても、互いが持つ情報を共有するだけで新たな気づきが生まれる機会があり、この経験から、各グループが保有する情報の共有化こそが課題であると認識しました。
「相互理解の会」を通じて、各部門の業務目標や日常業務への理解が深まり、セクショナリズムの発生や業務の停滞、認識のずれを防ぐ意識を参加者間で高めることができました。
この会をきっかけに、各部門の協力体制が醸成され、部門間の円滑なコミュニケーションが促進されるだけでなく、将来の経営層育成の一助となったと考えています。また、運営という立場で各部門の説明内容を調整する過程で会社全体への理解がより一層深まり、関係者との連携を通じて計画性や実行力を高めることができたと実感しています。