加湿器のサンプル設置による、大口受注に向けた提案と挑戦
東京の大手デベロッパー様より「名古屋の某オフィスビルに設置された他社製加湿器117台が、約10年間メンテナンスされていない。その加湿材の交換見積が高額だったため、ウエットマスター製品への更新について相談したい。」との連絡を受けた。
他社製加湿器からの大規模なリニューアル工事というこの大きなチャンスを掴むために行った新たな試みとは。
普通科高校卒業後、大学では体育学部を専攻した。大学卒業後、2006年に新卒入社後、大阪支店に配属となり、メンテナンス・リニューアルの現場作業を主に担当した。その後、2014年に東京へ転勤となり、現在のサービス営業グループに異動となった。現在は課長としてサービス・リニューアル工事の提案や部下の指導育成に従事している。
名古屋営業所のサービスメンテナンス担当であるKと現場調査を行った結果、既設の他社製加湿器はお客様のニーズに対してオーバースペックだった事が判明しました。この結果を受け、加湿能力が異なる2種類の加湿器(既設同等の加湿器[VHF70]と能力を下げた加湿器[VHF50])を無償で現場へサンプルとして設置し、実機でのトライアル利用が必要と考えました。ただし、通常は無償でのトライアル利用は行っていません。しかし、お客様に最適な加湿器を選定するため、この提案について上長と当時の社長に相談し、サンプル設置の許可を頂きました。
A社様に対し、現場でのトライアル運用に向けてサンプル機器設置の目的や各加湿器の加湿能力の違いなどを説明し、サンプル機器の設置をご承諾いただきました。ただし、お客様からは加湿材の厚みが既設品の1/3程度になることから「十分な加湿が行えるのか」という懸念も示されました。
トライアル運用は実際の加湿シーズンである12月~1月にかけて実施し、数ヵ月おきに必要なデータをお客様からご提供いただく形で進めます。このデータに基づき、最適な加湿器を選定するための性能評価を実施しました。
A社様は当初、加湿能力を下げることへ不安を抱いていました。しかし、1シーズンのトライアル運用により、既設の加湿器よりも能力を下げた[VHF50]でもお客様が求める加湿能力を十分に満たすことを実証。お客様に最適な加湿器であることをご納得いただけました。また、[VHF50]は既設と同等の能力を持つ[VHF70]と比較して、給水量が約半分になります。これにより、年間約450万円のコスト削減が見込めます。さらに、通常5年間隔で交換を推奨している加湿モジュール(加湿材)もランニングコスト面で有利である点を評価いただき、更新が決定しました。
提案当初は、加湿能力を下げるという提案への理解を得るのに苦労しました。しかし、空気線図(空気の状態を表すための図)を用いて温度・湿度の変化や飽和効率に関する解説を丁寧に行ったことで、お客様に納得いただき、トライアル運用へと進めることができたと感じています。
ビルのオーナー様へ更新機器の必要性をご理解いただき、ビル管理会社(B社様)との金額面の合意を経て、数千万円規模のリニューアル工事を受注しました。
納品後、お客様からは「加湿モジュール(加湿材)が外しやすくなった」「日本製なので安心」といった好意的なご意見をいただいています。今後は定期メンテナンス契約に向けた提案活動も継続していく予定です。
この案件は、名古屋営業所にとって初めての大型案件でした。そのため、東京からのサポートのもと、名古屋営業所のメンバーも交渉に同席し、今後の営業活動に活かせる貴重な経験となりました。また、機器の更新作業は仙台営業所や福岡営業所のメンテナンス担当者が担当し、各拠点の経験値を高める機会となりました。今回の経験が地方拠点での更新工事受注拡大の足がかりになることを期待しています。
これまで社員中心のトレーニングセンターとして利用していた施設を改装し、2025年7月より「ナレッジセンター」へと生まれ変わりました。
ナレッジセンターではお客様を対象とした加湿セミナーの開催や、社員や協力会社に対する実機を使ったメンテナンス技術の指導などに活用しています。