研究開発
R&Dセンター
ウエットマスターは創業当時から自社工場を持たないファブレス型メーカーです。その分、研究や開発に資源を注ぐため、2007年1月にテクニカルセンターを開設。研究開発・製品開発・製品検証などの拠点として活用してきましたが、2024年に創業55周年を迎えたことを機に従来施設のリニューアルを行い、旧テクニカルセンターは 加湿を中心とした水と空気の調整技術の研究開発および設計検証の拠点として「R&Dセンター」へ生まれ変わりました。
当施設には技術部門を中心とする社員が勤務し、日々、製品開発や新たな技術、価値の創造に取り組んでいます。レベルの高い技術者教育に資する設備とすることが建設時の理念に掲げられており、この先も長く存続・発展していくための生命線となる技術人材の育成拠点としても位置づけられています。
施設情報
施設名称:R&Dセンター
所在地:〒359-0004 埼玉県所沢市北原町866-12 [地図]
開設:2024年12月
ロゴマーク
会社設立55周年を記念し、R&Dセンター専用のロゴマークを制定しました。コーポレートロゴで表現されている「水」と「空気」を組み合わせ螺旋形状とすることで、新たな水と空気の調整技術・製品の開発、ステークホルダーの皆様や社員同士の連携など、ヒトやモノが掛け合わさり結びつく拠点となるようなデザインになっています。
施設紹介
施設紹介動画
空調機組込試験室
空調機組込タイプの加湿器を試験するための設備です。片側全面が透明アクリル板で構成されており、濡れ面形成の状況や制御方法の違いの再現など、現場では把握しづらい大型空調機内蔵加湿器の運転状況が確認できます。
多目的試験室
様々な加湿方式・設置方式に対応した温湿度条件を再現できる大型試験室です。床置型・天吊型・ダクト接続型など様々な環境下で加湿量の精密な計測を行うことができます。
環境試験室
マイナス10℃~50℃まで温度条件を再現でき、製品の耐久性や環境適応性を確認するための設備です。
簡易温調室(ビニールブース)
移動可能な簡易温調室(ビニールブース)は単独気化式加湿器の耐久試験に特化した設備です。省スペースで効率的な試験を行います。
気化式ライフ試験設備
加湿素材の耐久性を評価する設備です。加湿器が最も使用される「冬期」の空気条件を常に再現でき、長期的な運転が可能です。また、片側全面が透明アクリル板で構成されているため、内部の状況を常に確認できます。
試験用ダクト
主に蒸気を用いた試験を実施するための設備です。片側全面が透明アクリル板で構成されており、温度条件や噴霧装置の種類によって異なる蒸発吸収距離の違いが目視で確認できます。
セミナールーム
お客様をお迎えし、セミナーなどを開催できる部屋もご用意しています。セミナーと合わせて、加湿器の運転状態などを見学していただくことも可能です。
開発ストーリー
現場の問題点を解析しながら試験・研究を重ね、新たな製品を生み出しています。
個別分散空調にベストマッチ「てんまい加湿器」
個別分散空調が普及。加湿はどうする?
1982年、ビル用マルチエアコンが発売され、その省エネルギー性や快適性から個別分散空調が広く普及し、現在では空調方式の主流となっています。その一方、コンパクトなビル用マルチエアコンに組み込む加湿器は、「スペース上の制約により十分な能力が確保できない、しかも暖房運転時しか加湿されない」など、当時この問題を解決する加湿器がありませんでした。
これらの個別分散空調における加湿の問題を解決するため、エアコンとは別に天井に取り付け、単独で室内に直接加湿する「てんまい加湿器」を開発し、1986年に販売を開始いたしました。「てんまい加湿器」の単独運転・室内直接加湿の新しいコンセプトは高く評価され、急速に普及。今や加湿器の代名詞となるまでに成長し、ご好評を頂いています。
発売以来30年以上を経過した現在、空調方式や建物の進化にあわせ、改良を重ねた「てんまい加湿器」は8代目となり、なおも導入数は拡大し続けています。
▲初代の「てんまい加湿器」WM-VCA1500
▲8代目となる「てんまい加湿器」WM-VCJ2201
能力アップ、衛生面への配慮、高機能化が図られています。
立体拡散蒸気噴霧装置/スチームブレンダー
蒸気加湿なら…
「噴霧した蒸気は、すべて空気に溶け込むから大丈夫…?」
「加湿量(噴霧量)を満足していれば加湿不足は起こらない…?」
これは俗に「蒸気神話」と呼ばれるもので、現在でも同様の話をしばしば耳にすることがあります。
なぜ「蒸気神話」が囁かれるようになったのか。
40数年前の空調は、ボイラ蒸気(生蒸気)噴霧による加湿が主流でした。その当時に発売された高圧スプレー式加湿器は、「蒸気源(ボイラ)が不要」、「蒸気配管が不要」、「安価」など、ボイラ蒸気噴霧以外の新しい加湿方式として広く普及。しかし、水加湿である高圧スプレー式加湿器と蒸気噴霧の「加湿のしやすさ」を比べると大きな差があったことや、高圧スプレー式加湿器の採用時に適切な選定が行われなかったなどの理由により加湿不足の問題が生じたことが、当時の定説として「蒸気神話」に繋がったものと考えられます。
蒸気といえども冷やされれば再凝縮
前述のとおり蒸気噴霧が加湿しやすいことは一般的に知られるところですが、あまり知られていないのが「全外気空調や外気冷房など、12℃から20℃といった低温空気への蒸気加湿の場合、噴霧した蒸気が空気中に溶け込みにくくなり、送風機やダクト内で凝縮・露付し障害を引き起こす」という現象です。
これらに対し、当社では長年にわたる加湿の技術と経験を生かし、新機軸の蒸気噴霧装置の開発に着手。現場の問題点を解析しながら試験研究を重ね、さらにその性能を検証し、独自の「立体拡散蒸気噴霧装置/スチームブレンダー」として商品化。一般噴霧管からスチームブレンダーへ改修したお客様からは、「一般噴霧管の時は噴霧した蒸気が低温の空気により凝縮するため必要以上に多くの蒸気噴霧が必要だったが、スチームブレンダーに改修してからは蒸気噴霧量減少による省エネに繋がった。機外漏水の心配も無くなった」と高い評価をいただいています。
現在では設計者の方からも「この空気条件だとウエットマスターのスチームブレンダーでないと無理」とのご指定をいただくまでになり、ニッチな分野でもお客様の問題解決に取り組んでいます。
▲一般蒸気噴霧管の噴霧状態。再凝縮による露付が問題に。
▲一般噴霧管による蒸気加湿。1.5mを過ぎても白い蒸気が目視できる状態(撮影:旧テクニカルセンター試験施設)。
▲スチームブレンダーによる蒸気加湿。噴霧後すぐに蒸気は空気に溶け込んでいます(撮影:旧テクニカルセンター試験施設)。