オフィスビルに 400 台設置された空調機用加湿器のエピソードです。大型オフィスビルの空調はそれ自体がエネルギーのかたまり。季節によって外気を取り入れる量を変化させ様々な省エネ対策を取っています。しかし外気の量が変わるということは、求められる加湿性能も季節によって変わるということ。大切な資源である使用水量の節約も併せ加湿性能の可変を実現する仕組みを検討しました。
加湿性能の可変には、加湿部をブロック化する方法が有ります。そこで給水ユニットを 1 つから 2 つへ増設し、更に給水電磁弁を増設することで 4 段階の可変性能を実現するプランを検討しました。 3DCADなら容易に出来る変更ですが給水ユニット、電磁弁が増えれば、ホースや給水ヘッダーが増える。特にホースは 1 ユニット 2 本あるので 4 本となり、図面上でも複雑な形状になりました。それでもトライしてみようと電磁弁 2 個付の給水ユニットの試作品を作って取り付けてみると…給水ユニットが 2 個になったことで加湿モジュールの風が通る部分を塞ぐカタチに。更に部品をつなぐ継手も増えて重くなり、振動に弱くなってしまいました。
振動への対処は部品を減らし、軽量化を図ったことで解消しました。風が通る部分を塞ぐ無様な姿も、発想を少しだけ変えて解決。2つになったことでモジュール正面に(正対で)付いていた給水ユニット+電磁弁をクルッと90度回転。取付位置の微調整をしてスッキリ納めることができました。いかに CAD が便利になっても、私たちの仕事はこのように実機確認が重要。ですから所沢のテクニカルセンターで日々、トライ&テストが行われています。
ケース A の滴下浸透気化式加湿器 VHE タイプ改良版(加湿モジュール 4 枚タイプ)は、実験室に納品され、お客様が要望した空気条件をつくっています。このように新しくできる実験室や工場などは、使われる状況を事前確認することができません。与えられたデータなどからイメージし、要望にマッチした製品を提供する難しさが伴いますが、この感覚は経験を積むうち身についていきます。今回も新たな標準仕様品が 1 つできました。