ある日、営業 1 グループの郷に、空調機メーカーからいつものように電話がかかってきました。「神奈川県の実験施設用に加湿器がほしい。空気条件は24℃ 50%RH ±5%RHで」という細かい設定の上、最大限の省エネルギーを考慮することと言うオーダーでした。グループのミッションは標準仕様品をスピーディに納品すること。決まっているスペックを変更すれば、当然ながら納品が遅くなり、コストにも跳ね返ってきます。しかし郷は「24℃ 50%RH ±5%RH」の条件を聞いた段階で、標準仕様のままでは難しい数値と判断しました。
与えられた条件は、これまでの常識では、エネルギーを多大に必要とする電気式蒸気加湿器を採用するのが一般的な手法でした。しかし最大限の省エネルギーを図りたいというオーダーに対して、当社なら省エネ性の高い気化式加湿器の技術でオーダーの実現が可能と考え、郷はその旨を空調機メーカーへ伝え、時間の猶予を得たうえで、技術本部技術管理グループの谷﨑とともにスペックの見直しを開始しました。まず空気線図というグラフを使って、温度と湿度の関係や必要飽和効率など適正値を求めて行きました。結果、年間を通じて条件を満たすためには、飽和効率90%が必要であることが判明した。
しかし与えられた時間と予算で新しい部品開発は不可能。何とか現行部品の工夫で数値を出さなければなりませんでした。郷と谷﨑は 3DCAD、能力計算で何度もシミュレーションを実施しウエットマスターの様々な部品やユニットの組み合わせを検討していきました。すると意外なところに解決のヒントが、今回のケースは設置スペースに余裕が有ったので加湿モジュールを 2 列から 3 列に増設することで容易に性能アップを図れたのです。